医療関係者にも、民間病院にも自己改革が必要です
本日夕方に明日から緊急事態宣言が発令される事が発表される様です。1月2日の1都3県知事の要請から大きく事態が動きました。
実はわれわれ医療に対する社会の風向きが、昨日から変わって来たと私は思います。
一昨日までは「医療関係者に感謝」一色でしたが、昨日から「日本は欧米の1割しか患者がいないのに、病床は欧米よりずっと多いのに、なんで医療崩壊なんかするんだよ。コロナを触らない大部分の医療関係者はサボってるんじゃないのか」という風潮が一気に盛り上がってきました。


今朝のモーニングショーのフリップです。こういう事です。
OECD標準では人口当たりベッド数は世界一です。実は看護師数も世界最高水準です。医師は標準位ですが、少ないわけではありません。

さらに民間病院のコロナに対する取り組みが少ないのではないかと疑問が持たれています。
アメリカ人が日本の病院を見ると「病院とナーシングホームの合併」の様に見える、日本人がアメリカの病院を見ると「ICUとハイケアユニットしかない」様に見えると言われ、病院の定義は各国によって違うのですが、それにしてもどうなのか。
日本はICUが少なすぎるのが現在の患者数でもコロナ重症者を見切れない原因だという声がありますが、人口当たりICUベッド数はアメリカ、ドイツの1/3ですが、イタリア、フランスと同じくらいで、スペインより多く、イギリスは日本の半分しかありません。
病院の定義が国によって違う様に、ICUの定義が国によって違うのではないかと思いますが、高度医療機械の普及率では世界一と言われる日本の医療としては欧米の1/10の患者数で重症者医療がパンクするのは問題です。
この問題は、私は医療者、医療機関のガバナンスが効いていない事だと思います。だから医療関係者や医療機能を機動的・効率的に活用できないのでは。
公立病院はコロナ感染症に対して各地で大きな役割を果たしています。それができるのは勿論金銭的な心配(病院が倒産したり賞与が減ったりしない)がない事とガバナンスが効いている事でしょう。
災害医療ではDMAT、AMATなど公立・公的・民間の全てを横断的にマネジメントする仕組みが出来ていますが、新型感染症ではこれはありませんし、今後も出来ないでしょう。
なぜなら災害医療ではDMATは数日、AMATも数週間の活動で終了できますが、新型感染症対策は数か月の期間を要するからです。
さて、民間病院がコロナに積極対応しないのは、一つに金銭的問題と言いました。しかしこれに対しては国はかなりの補償を打ち出しています。
新型感染症重点医療機関は拠出する1病床あたり7.1万円/日の給付がなされます。コロナ病棟に新たに外部より掃除洗濯などのナースエイドを入れた場合、600円/時間の補助が出ます。
新規にコロナ病床を開設する場合は、中等症・軽症病床に対して450万円が支給されます。
コロナに対応する物品はほぼ補助金で買う事が出来ます。発熱者外来用コンテナ、陰圧装置、PCR検査機械、アルコール、ガウンなどの消耗品もほぼ全額補助金で購入できます。
このような公的な援助が有り、国民の悲鳴が聞こえる中、民間病院を含む医療関係者の自己改革がどうしても必要だと考えます。
われわれ伯鳳会グループは補助金を利用して、PCR検査機器を10台近く購入、既に持っていた器械と合わせて1日600人以上のPCR検査を行う体制を整えました。コンテナ、陰圧装置、消耗品も補助金で購入し、10病院すべてがPCR検査を行う事ができ、発熱外来も7病院で行っています。
既に東京曳舟病院、大阪暁明館病院、はくほう会セントラル病院(尼崎)は病棟単位でコロナを受け入れるコロナ感染症重点医療機関として中等症、軽症のコロナ患者を受け入れています。
あそか病院(江東区)、赤穂中央病院はゾーニングの上、病床単位でコロナ患者を受け入れるコロナ感染症協力病院として同様にコロナ患者を受け入れています。
この度、あそか病院も重点医療機関になる事になりました。経緯は一昨日のブログのコメント欄に書きました。
『コロナ患者様の受け入れ医療機関が東京では無くなりました。今、東京では3000人の入院待ちが、江東区も130人入院待ちがいます。
昨日、江東区保健所長があそか病院に来られ、院長に中等症、軽症受け入れ病院になって欲しいとのお願いです。今までも感染症協力病院として2床拠出していましたが、とても足らないようです。
昨日、今日と会議をやり、8日から42床の病棟にいる患者様を退院、転院、転棟させ、14室の個室とし、コロナ病棟として運営を開始します。
あそかも伯鳳会グループで4病院目のコロナ重点医療機関になりました。
職員にはゴールデンウィークまでは、病棟は閉められないだろうと通達しました。それまでフルPPEの生活です。
コロナ手当は1勤務2万で、たぶん日本一高額だと思いますが、これは命懸けの仕事です。
余程バインディングを良くして励まし合いながらで無ければ乗り切れないでしょう。
頑張りますが、頑張り切れるか否か不安です。』
これで重点医療機関の4病院、協力病院の1病院の合計5病院がGWまではvsコロナファイトが続きます。前回のクラスターに対する病院の対応は約一月で終了しましたが、今回は3か月以上は続きます。コロナに対する医療をルーチン化し、日常的に行うメンタリティーを獲得しなければ持たないと思います。
十分な休養と適切なローテーションを行い、金銭的インセンティブを職員に与えなければ数か月にわたるミッションは完了できないでしょう。
伯鳳会グループはコロナ病棟ナースエイドの募集、雇用もしています(2000円/時給)。
職員に対してはコロナ手当てを支給しています。直接患者にコンタクトするものは2万円/日、間接的にコンタクトする者は1.2万円/日支給します。これは民間・公立・公的全てを含め日本一高額だと思います。
国から病床単位で降りてくる補助金の相当程度を人的補助に回し、ガバナンスの維持とモチベーションの維持を企図し、コロナ病棟を返上できる日を待ちます。
そうはいっても、伯鳳会グループ全体でコロナ入院に対応するために拠出した病床は115床、入院可能な患者数は(大部屋も個室として使わなければならないので)44床に過ぎません。伯鳳会は約2,000床の病床を有しますから、それぞれ5.8%、2.2%に過ぎません。
頑張っているつもりですが、これで国民の期待に応える事ができるのか。地域の中等症・軽症患者の対応が間に合うのか。
そうは言っても、伯鳳会グループでコロナを受け入れていない病院は療養病院、リハ病院、手術・健診専門病院だけになります。
これ以上は…
困りました。今後のコロナの動向によってはとんでもない事になるかもしれません。
実はわれわれ医療に対する社会の風向きが、昨日から変わって来たと私は思います。
一昨日までは「医療関係者に感謝」一色でしたが、昨日から「日本は欧米の1割しか患者がいないのに、病床は欧米よりずっと多いのに、なんで医療崩壊なんかするんだよ。コロナを触らない大部分の医療関係者はサボってるんじゃないのか」という風潮が一気に盛り上がってきました。


今朝のモーニングショーのフリップです。こういう事です。
OECD標準では人口当たりベッド数は世界一です。実は看護師数も世界最高水準です。医師は標準位ですが、少ないわけではありません。

さらに民間病院のコロナに対する取り組みが少ないのではないかと疑問が持たれています。
アメリカ人が日本の病院を見ると「病院とナーシングホームの合併」の様に見える、日本人がアメリカの病院を見ると「ICUとハイケアユニットしかない」様に見えると言われ、病院の定義は各国によって違うのですが、それにしてもどうなのか。
日本はICUが少なすぎるのが現在の患者数でもコロナ重症者を見切れない原因だという声がありますが、人口当たりICUベッド数はアメリカ、ドイツの1/3ですが、イタリア、フランスと同じくらいで、スペインより多く、イギリスは日本の半分しかありません。
病院の定義が国によって違う様に、ICUの定義が国によって違うのではないかと思いますが、高度医療機械の普及率では世界一と言われる日本の医療としては欧米の1/10の患者数で重症者医療がパンクするのは問題です。
この問題は、私は医療者、医療機関のガバナンスが効いていない事だと思います。だから医療関係者や医療機能を機動的・効率的に活用できないのでは。
公立病院はコロナ感染症に対して各地で大きな役割を果たしています。それができるのは勿論金銭的な心配(病院が倒産したり賞与が減ったりしない)がない事とガバナンスが効いている事でしょう。
災害医療ではDMAT、AMATなど公立・公的・民間の全てを横断的にマネジメントする仕組みが出来ていますが、新型感染症ではこれはありませんし、今後も出来ないでしょう。
なぜなら災害医療ではDMATは数日、AMATも数週間の活動で終了できますが、新型感染症対策は数か月の期間を要するからです。
さて、民間病院がコロナに積極対応しないのは、一つに金銭的問題と言いました。しかしこれに対しては国はかなりの補償を打ち出しています。
新型感染症重点医療機関は拠出する1病床あたり7.1万円/日の給付がなされます。コロナ病棟に新たに外部より掃除洗濯などのナースエイドを入れた場合、600円/時間の補助が出ます。
新規にコロナ病床を開設する場合は、中等症・軽症病床に対して450万円が支給されます。
コロナに対応する物品はほぼ補助金で買う事が出来ます。発熱者外来用コンテナ、陰圧装置、PCR検査機械、アルコール、ガウンなどの消耗品もほぼ全額補助金で購入できます。
このような公的な援助が有り、国民の悲鳴が聞こえる中、民間病院を含む医療関係者の自己改革がどうしても必要だと考えます。
われわれ伯鳳会グループは補助金を利用して、PCR検査機器を10台近く購入、既に持っていた器械と合わせて1日600人以上のPCR検査を行う体制を整えました。コンテナ、陰圧装置、消耗品も補助金で購入し、10病院すべてがPCR検査を行う事ができ、発熱外来も7病院で行っています。
既に東京曳舟病院、大阪暁明館病院、はくほう会セントラル病院(尼崎)は病棟単位でコロナを受け入れるコロナ感染症重点医療機関として中等症、軽症のコロナ患者を受け入れています。
あそか病院(江東区)、赤穂中央病院はゾーニングの上、病床単位でコロナ患者を受け入れるコロナ感染症協力病院として同様にコロナ患者を受け入れています。
この度、あそか病院も重点医療機関になる事になりました。経緯は一昨日のブログのコメント欄に書きました。
『コロナ患者様の受け入れ医療機関が東京では無くなりました。今、東京では3000人の入院待ちが、江東区も130人入院待ちがいます。
昨日、江東区保健所長があそか病院に来られ、院長に中等症、軽症受け入れ病院になって欲しいとのお願いです。今までも感染症協力病院として2床拠出していましたが、とても足らないようです。
昨日、今日と会議をやり、8日から42床の病棟にいる患者様を退院、転院、転棟させ、14室の個室とし、コロナ病棟として運営を開始します。
あそかも伯鳳会グループで4病院目のコロナ重点医療機関になりました。
職員にはゴールデンウィークまでは、病棟は閉められないだろうと通達しました。それまでフルPPEの生活です。
コロナ手当は1勤務2万で、たぶん日本一高額だと思いますが、これは命懸けの仕事です。
余程バインディングを良くして励まし合いながらで無ければ乗り切れないでしょう。
頑張りますが、頑張り切れるか否か不安です。』
これで重点医療機関の4病院、協力病院の1病院の合計5病院がGWまではvsコロナファイトが続きます。前回のクラスターに対する病院の対応は約一月で終了しましたが、今回は3か月以上は続きます。コロナに対する医療をルーチン化し、日常的に行うメンタリティーを獲得しなければ持たないと思います。
十分な休養と適切なローテーションを行い、金銭的インセンティブを職員に与えなければ数か月にわたるミッションは完了できないでしょう。
伯鳳会グループはコロナ病棟ナースエイドの募集、雇用もしています(2000円/時給)。
職員に対してはコロナ手当てを支給しています。直接患者にコンタクトするものは2万円/日、間接的にコンタクトする者は1.2万円/日支給します。これは民間・公立・公的全てを含め日本一高額だと思います。
国から病床単位で降りてくる補助金の相当程度を人的補助に回し、ガバナンスの維持とモチベーションの維持を企図し、コロナ病棟を返上できる日を待ちます。
そうはいっても、伯鳳会グループ全体でコロナ入院に対応するために拠出した病床は115床、入院可能な患者数は(大部屋も個室として使わなければならないので)44床に過ぎません。伯鳳会は約2,000床の病床を有しますから、それぞれ5.8%、2.2%に過ぎません。
頑張っているつもりですが、これで国民の期待に応える事ができるのか。地域の中等症・軽症患者の対応が間に合うのか。
そうは言っても、伯鳳会グループでコロナを受け入れていない病院は療養病院、リハ病院、手術・健診専門病院だけになります。
これ以上は…
困りました。今後のコロナの動向によってはとんでもない事になるかもしれません。
この記事へのコメント
1月7日のブログの記事を拝見いたしました。
あそか病院の医療機関としての社会的責任を果たすべくコロナ病床の拡大とそれに伴う日本一高額なコロナ手当の支給、実に素晴らしいことだと思います。
私はあそか会のいち職員として、古城理事長の方針を支持します。
ところで去年、あそか会のある施設で職員がコロナに感染し、自宅待機の職員が増えて職員数が不足したのでほかの施設から応援の職員が入りました。
しかし、この応援の職員に対してはなんら手当が支給されておりません。
これはとても残念なことだと思います。
古城理事長もブログに書かれているとおり、コロナに関わる職員のモチベーションを維持するためのなんらかの手当は必要でしょう。
施設の職員にも日本一高額な応援手当を!とまでは申しません。
ですが、今後類似の状況が発生したときはぜひともご一考していただきたいと存じます。
応援職員にも当時の手当て、直接部門1勤務5,000円、間接部門1勤務3,000円を払っているはずです。
休み明けに確認してもらいますね。
真のナイチンゲールは居ませんね
説明不足で申し訳ありません。
たしかにクラスターが発生した北砂ホームでは危険手当をいただいておりますが、クラスターこそ発生しなかったものの職員の感染で自宅待機が生じ、職員不足を補うために他施設から応援が入った江東ホームでは応援の職員に対して手当の支給がございませんでした。細かい状況は異なりますが、感染対策の装備をしたうえで慣れない職場でがんばり、PCR検査を受けた後に元の職場に復帰しております。ぜひ、よろしくお願いします。