高橋恵介選手のドーピングチェック抵触について

 今日は真面目な話をします。アーノルド・クラシック招待ベンチプレス選手権で、高橋恵介選手がドーピングチェックに抵触した事は以前ブログにも書き、皆さんも雑誌などで知っておられる事でしょう。
 私のブログを見た高橋選手本人が全日本パワーの数日前に私に連絡してこられ、私に、今回の事象について医師として、JPA医学委員長としてどう考えているか、見解を教えてほしいとのmailを貰いました。
 高橋選手とは1,2度文書のやり取りをし、JPAの理事の皆様にも私の見解を伝え、高橋選手がIPFに提出するJPA医学委員長としての添付文書は近日中に完成すると思われます。

 高橋選手は噂が噂を呼び、特にステロイドを用いていたとの噂まで囁かれる事に非常に傷ついています。このブログは、せいぜい1日100~200hitの不人気ブログですが、こんなブログでも良いから事実を知らせて欲しいとの希望がありました。
 この事象はあいまいな記述や、憶測の記述が許される内容ではないため本人が私に語った内容、JPA理事、関係者の方から聞き得た事をできる限りそのまま書きます。
 但し、今日の記述は全てベンプレ親父の個人的責任による文書であり、JPA医学委員長としての記述ではありません(JPA医学委員長としての文書はJPA理事者と調整中です)。

 1、ドーピングに抵触した薬品はメトキシフェナミン(ベータ2刺激剤)であり、ステロイドではない。
 2、メトキシフェナミンは市販風邪薬のアスメトン(第一三共製薬)の成分である。競技3週間前に風邪を引き、医師を受診(診断書あり)、処方を受けたものの咳が止まらなかった為、競技2週間前より当日まで以前薬局で購入していた「アスメトン」を服用した。
 3、メトキシフェナミンはWADA(世界アンチ・ドーピング機構)2008リストに禁止薬物として明記されていなかった為、服用可能と考えた(実際は薬物名は記載されていないものの、べータ2刺激剤に属する薬物は全て禁止です)。
 更に、リストに入っていない薬物と信じていたため、ドーピング時の書類に服用している事を記述していなかった(今回問題を複雑にしているのは、この「記述が無かった」事ではないかと思います。意図的ドーピングを疑われるとしたら、これだけが唯一の根拠だと思います)。

 以上1~3が今回の事象の原因であると言えます。厳密に細部まで検証したわけではありませんが、1~3を疑う合理的理由は無いと考えています。
 以下、医師としての知識、今回の事象を受け、知り得たを書きます。
 4、メトキシフェナミンについて問題となる薬効は興奮作用と蛋白同化作用である。
 5、メトキシフェナミンは第一世代のベータアドレナリン受容体刺激剤であるが、開発年度は1950年代と古く、医家用医薬品としては後発品が一つだけ販売されているに過ぎない。
 6、ベータアドレナリン受容体刺激剤としての作用は、α作用<β作用、β1作用<β2作用であるため、脈拍増加、心拍出量増加、中枢刺激作用は劣る。
 7、従ってアドレナリン、エフェドリンなどのベータアドレナリン受容体刺激剤と比較すると興奮作用は劣っている(2008WADAリストでは興奮剤から除外された)。
 8、メトキシフェナミンの蛋白同化作用に関する文献は現在見当たらない(あるいは無い)。
 9、日本薬剤師会からの電話での聞き取りによると、「確実な蛋白同化作用で知られるβ2アゴニスト(促進剤)「クレンブテロール」の蛋白同化をもたらす過程についての研究で、機序は不明確であるものの、その発現にはβ2受容体が関与するものと考えられた。
 従って、その他のβ2アゴニストにも同様な作用が起こり得るのではないかと考えられ、β2刺激剤が禁止物質となった」との見解を得た。
 10、蛋白同化作用は、β2作用が関与すると考えられている。同作用を有するクレンブテロール(商品名スピロペント)は第3世代に属するβアドレナリン受容体刺激剤であり、α作用≒0、β1作用<<β2作用、持続性大であり、メトキシフェナミンの蛋白同化作用はクレンブテロールに比して著しく弱いと推定される。

 以上4~10は私の予断は入っておらず、医学的知見としてある程度の普遍性を有すると思います。
 以下は私の見解です。
 11、ベータアドレナリン受容体刺激剤の興奮作用を期待してメトキシフェナミンを用いる事は有用性が乏しく、意図的に使用する薬物として選択されるとは考えられない(使用するならエフェドリン等であろう)。
 12、ベータアドレナリン受容体刺激剤の蛋白同化作用を期待してメトキシフェナミンを用いる事は有用性が疑わしく(文献すら無い)、意図的に使用する薬物として選択されるとは考えられない(使用するならクレンブテロールであろう)。
 13、以上より今回の事象は意図的ドーピングではなく、うっかりドーピングであると考える事が妥当である。

  これから先はIPFの裁定を待つしかありませんが、同じベンチプレスを愛する者として、高橋選手は「うっかりドーピング」であると信じています。同時にIPF、JPAとして、アンチ・ドーピングの取り組みが揺らぐ事があってはならないと考えます。

 今後アンチ・ドーピングの知識の普及、啓蒙活動に力を入れる事が更に大切だと考えます。
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 この本は昨日書店で見つけて買ってきました。扇情的な題名から、最近流行の中国バッシングの本かと思いましたが、極めて真面目なアンチ・ドーピングの本です。
 JADA(日本アンチ・ドーピング機構)の理事長、WADAの選手委員会委員、スポーツジャーナリスト、新聞記者、雑誌記者、作家が分担執筆しており、ドーピングの倫理的問題や現状についてよく書かれていると思います。ドーピング経験者の体験談も2本掲載されており、選手の悩みにも触れています。是非一読をお勧めします。
 (それにしても、なんでこんなオバカな題名を許したんだろう・・・)

 今日は腕のトレ。仕事が忙しく、昼ごはんが食べられなかったので、トレ前にクッキー2枚と甘いジュースを飲みましたが、途中でガス欠。ヘロヘロ君でした。

 今日は事務系職員の入社試験。一次試験(ペーパーテスト、面接)で36名を19名に絞り、今日は私も入って面接、グループ討論をやりました。当初4人採用の予定でしたが、4人目と5人目が甲乙付けがたいため5人採用としました。
 数年前の就職氷河期時代は100人以上の応募があり、男性も結構マシな学生がやって来たのですが・・・
 まあ、量より質で納得してます。

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この記事へのコメント

白熊姫
2008年06月21日 22:49
古城さんが医学委員長をしてくれているという事は、選手にとって大変な力になります。暖かくきちんとした対応に頭が下がります。尊敬です。ベンチも頑張って下さい!

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