医療における日本型民主主義の敗北

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 コロナ感染症の拡大に歯止めがかからず、医療崩壊が起こっています。東京ではコロナ入院待機患者が正月明けの3,000人からあっという間に7,000人です。コロナ患者を受け入れられる病床が足りません。逼迫しているのではなく不足しています。
 全国的に救急車のたらいまわしが増えてきました。重症コロナ患者の治療により高度急性期病院の受け入れ余力がなくなり、民間病院を中心にまだ有熱患者の救急搬送を嫌う病院があるからです。

 世界に誇る国民皆保険制度があり、平時においては平均寿命、平均余命、乳幼児死亡率など殆どの医療指標で世界最高水準にあった日本の医療体制は、コロナという有事に一気に馬脚を現しました。

 オバマ・ケアのトランプ政権による否定で更に医療提供体制が悪化したアメリカでは現在23,000人のコロナ患者がICUに収容されています。
 日本は人口当たりのICU病床数はアメリカの1/3ですが、ICUに収容されているコロナ患者は1,000人にも届きません。しかしアメリカよりはるかに優位にあると信じていた日本の医療提供体制は既に崩壊しているのです。

 アメリカの病院は、日本人が見ると「ICUとハイケアユニットしかない」と思われるように、重症患者に手厚く、軽症患者は家庭医とナーシングホームが診るわけですが、それにしても有事における日本の脆弱性が際立ちます。

 実は先日より伯鳳会グループで使用しているPCR検査機械のうち何台かを占めるメーカーの検査試薬が品薄になってきました。東京都は現在は1日6万人の検査が可能としていましたが、試薬がsold outになるかもしれません。何ともお粗末な事です。

 中国では河北省石家荘市(人口1100万人)、ケイ台市(700万人)で130人の患者と200人の無症状陽性者が発生し、9日から1週間のロックダウンに入りました。この間にすべての市民ののPCR検査を終え、ロックダウン解除を行うようです。
 合計1800万人のPCRを1週間に終える体制が既にあるのです。この数は、中国の検査体制なら東京都と大阪府の全員に1週間でPCR検査が行える事を意味します。

 それに比し、東京は最大6万人/日、それすら試薬の不足で怪しくなっています。土日祝日も無く毎日6万人の検査をしても、東京で検査が終了するのには200日、半年以上もかかってしまう。検査の方法の工夫で増やせるようですが、とてもじゃないが週単位で都民の全数PCR検査なんてできないでしょう。

 日本の医療は自由開業制とフリーアクセス性が特徴で、医師の配置や診療科の選択も自由、患者も地域の医療機関に縛られることなく自由に医療機関を選ぶ事ができます。この様な非常に資本主義・自由主義的な構造に対し報酬支払いには国民皆保険制度を適応するという世界的にもユニークな制度になっています。
 また、欧米の医療が中世以来、教会からスタートしたのに対し、日本は江戸時代より診療所から発展しました。その歴史的経緯から欧米は公的病院が多く、日本は医療の80%を民間が担っています。

 これらの経緯(欧米より市場原理が働きやすい)で日本は医療費が欧米より安く、平時においては効率的な医療が行われ、その成績もよい物でした。
 しかこれは多くを「神の見えざる手」に委ねるという事で、「国家の意思」は診療報酬改定に一部反映させることしかできず、その改定にも医療者側の意見が多く取り入れられる状態が続いています。

 このシステムは世界一でした。平時の場合は。しかし有事(コロナ禍)には機能しなかった。例えばコロナ検査試薬の一元管理をやり、生産調整すれば試薬不足は起こらなかったのでは。
 市場原理を優先するという事がガバナンスの欠如につながり、少なくとも医療に関しては有事の際の瞬発力ある行動変容を起こす事ができなかった。手続き民主主義も平時は結構ですが、結果を直ぐに求められる有事には適さない。

 有事の代表格と言えば戦争ですが、戦争には大政翼賛会、国家総動員法です。
 これには苦い記憶も多く、心情的に賛同できないのは良く判るのですが、このまま手をこまねいていては医療崩壊はさらに進み、患者は、国民はもっと死ぬでしょう。

 昨年、ロシアのプーチン大統領は「民主主義は時代遅れだ」と言いました。
 中国は権力集中により大きな経済発展を遂げ、欧米や日本が苦戦している、あるいは敗戦濃厚のコロナをも克服し、安価なワクチンを発展途上国に提供する事で更に影響力を増そうとしています。

 平時はたとえ歩みが遅くとも、コンセンサスを取り、足して二で割るような政策を取りつつよりマシな道を探っていく事は、ある程度は許されるでしょう。しかし有事はベストの政策を最速に実現していかなければ敗北です。
 我々はコロナに敗北しつつあります。敗因は人材を含めた「医療資源の有事における最適配分」を迅速に行うシステムを持たなかった事。

 ワクチンの開発でも同じでした。世界中でワクチン開発がスタートし、日本でもいくつかの大学、製薬会社でスタートしましたが、私は「どうせダメやろう」と思っていました。
 一つ一つの研究機関、会社の規模が小さすぎ、資本力が無さすぎ、日本の制度下では迅速な治験や審査も出来ず、競争に勝てるわけがないだろうと。

 昨日ネットで読んだのですが、「製薬企業は個々の規模が小さく競争力が無い。世界ではメガ・ファーマ4社でワクチン市場の7割が抑えられ、寡占化が進んでいる。日本は護送船団方式でワクチン産業が守られており、世界と戦う体力のある会社がない」という事でした。

 医療におけるITも同じです。日本でも主要な病院は電子カルテが使われていますが、これも国内の各ベンダーがまちまちに作っており、相互乗り入れができません。
 韓国は国家主導で電子カルテのソフトを一本化する事に成功し、日本よりずっと安価に販売されています(日本でも日本医師会がそれをやろうとオルカプロジェクトを立ち上げましたが失敗しました)。
 病院も、製薬メーカーも、電子カルテベンダーにもオーバーストア問題があります。これは日本の宿痾ともいうべき課題です。
 
 かつては都銀のそれが問題となり、合併が進みました。現在は地銀・信用金庫の合併・統廃合が進みつつあります。
 白物家電は韓国・中国に完敗し、今では日本国内では中韓のOEM品に日本ブランドを付けて売っているだけです。
 パソコンやスマホもその轍を踏みつつあります。
 
 昨年のベストセラーで菅首相もご執心のデービッド・アトキンソン著「日本企業の勝算」でもオーバーストア問題を解決し、中小企業の統廃合を進め、企業の規模を大きくする事が成長のカギだと位置づけられています。
 これが何処まで正しいのかは分かりませんが、日本は全業種において「中小企業保護」を貫いてきました。「雇用を守る」が主たる理由になっていますが、その合間合間に「中小企業の素晴らしい技術」、「中小企業の美しいストーリー」をちりばめ、「大企業の横暴」や「大企業の不効率」を挟んでいく心理作戦をこれまで続けてきました。
 
 それは日本人のハートに馴染むのです。「下町ロケット」や「陸王」といった池井戸潤の小説は大ウケし、TVドラマなどにもなっています。

 私は中小企業保護政策の最大の失敗は農業におけるコメ政策だと思います。戦後GHQの命令で農地解放を行ったまでは良いのでしょうが、その後も過剰な介入を続け、結果としてコメ農家の大規模化を妨げ、またしても生かさぬよう殺さぬようにしてしまった。
 先日のTVを見て驚いたのですが、今は果物市場の方がコメ市場よりも経済規模が大きいそうです。前者には大規模化を阻止する介入がなされなかったからでしょう。

 医療や製造業、金融業では介入を最小限とし、大規模化を進めようとはしなかった。農業では介入を行うもののその方向性は小規模化の維持に向かった。
 どうやら日本人は「大きなもの」、「強いもの」は良くないもの、悪いものとの意識がどこかにあるのではないかと私は思います。
 「小さきものはみな美し」も大概にしなければ。

 日本型民主主義は「競争の排除」と「強者に対する規制」が行き過ぎている様に思います。この方向性を是正しなけれ民主主義は時代遅れ」となり民主主義は敗北すると思います。

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この記事へのコメント

2021年01月11日 15:12
コロナ禍は人々の健康を破壊するだけでなく、経済面でも人々を脅かす存在となる。コロナ禍で真っ先に解雇されるのは非正規雇用者で、何とか守られるのは正社員である。そのため、非正規雇用者の立場はコロナ禍で修羅場と化す。

正社員は「何とか」会社にしがみついていられれば、賃金の落ち込みやボーナスの削減はあったとしても、会社が何とか経営できていればコロナ禍でもほどほどに生き残ることができるだろう。

一方で、コロナ禍でも大きく資産を増やすのが株式等の金融資産を保有する富裕層である。政府はコロナで悪化する経済を下支えするために、大がかりな金融緩和や財政出動をしたので、これらの金がすべて金融市場に回って株価を押し上げた。だから、株式市場はどこもコロナ前よりも高値を保っているのである。

つまりコロナは、経済格差をブーストする社会現象だったのである。

コロナ禍以前から、経済格差はどんどん広がっていた。最初は少しの差であった格差は、やがては1000倍も2000倍も、いや1万倍も2万倍も開いて、もはや貧困層がどうあがこうが克服できない。

この極度なまでの経済格差が定着すると、その後に何が来るのか。それは、「経済による社会の分離」である。

世界の多くの国では、ひとつの国家が見えない層(レイヤー)で「分離」されている。そのレイヤーとは経済格差のレイヤーである。この経済格差の上と下とでは生活も文化も考え方も違う。場合によっては話す言葉までもが違ってくる。

分かりやすく言えば、金持ちたちが集う地域は安全だ。そして貧困層が集う地域は治安が悪い。だから金持ちは貧困層がいる地区には決して足を踏み入れないし、逆に貧困層が金持ち地区に行っても警備員や警察に追い出される。

それが定着すると、世界中どこでも貧困層と富裕層は自然に、明確に、完全に「分離」し、長い年月を経て同じ民族でも違う文化や生活になってしまうのだ。

富裕層と貧困層で分離するというのは、住むところも、通う学校も、付き合う人間も、行きつけの店も、持ち物も、食べる物も、やがては話し方も、すべてが違っていくということだ。

何もかもが「分離」し、お互いに接点が極端になくなっていく。

教育で言うと、貧困層は親の資金面から安い学校にしか通えなくなり、ここで富裕層と貧困層の子供たちが「分離」される。富裕層の子供たちは質の良い教育を行う私学に通い、教育に理解のある親と熟練した教師に守られて学力を伸ばす。

一方で貧困層の子供たちは親の理解もなく、給料が安くてやる気のない教師の教育を受けて、教育の質が落ちて学力も低下していくことになる。塾にも通う経済的余裕もない。

公立校ではどんなにやる気のない生徒、問題生徒、非行生徒がいても学校から放逐できないので、しばしば学級崩壊も起きて授業がストップしたりする。

だから、富裕層の子供たちが学力を上げる環境の中で貧困層の子供たちは学力を落とし、名門校にはなかなか入れない構造的な問題が発生する。気が付けば、学歴で大きなハンディが生まれていく。

それは、容易に越えられない「見えない壁」となっていく

さらに地域で見ると、ある地域に貧困層が多くなっていくと、地価が下がってますます貧困層が流れ込んでいく。そうすると、不動産価格の下落や環境の悪化を嫌って、富裕層が少しずつ、しかし確実に抜けていく。

そうすると、ますます貧困層がその地区を埋め尽くすようになっていく。一方で、富裕層が集まるところは地価が上がって貧困層が住めなくなる。これで人々が経済レイヤーによって「完全分離」される。

職業でも同様の「分離」が起こる。富裕層の子弟が卒業する大学卒の勤める職種と、貧困層の勤める職種も違っていく。入れる企業も違い、同じ企業でもエリートクラスと労働者クラスに分かれてこのふたつは交差しなくなる。

この「分離」は、容易に越えられない「見えない壁」となっていく。

グローバル化を無批判に取り入れた政治家や大企業が悪いということになる。

しかし、日本はもうとっくの前にグローバル化を完全に受け入れた。これからも、どんどん受け入れていくことになる。それがさらなる経済格差と「分離」を生み出すことになるのは、目に見えている。

もはや、格差が日本国民を「分離」してしまうのは避けられない事態だ。私たちはどちらかに分けられてしまうのだ。そして、同じ日本人でも、まったく交わらない文化断絶ができあがる。

同じ民族なのに、別々に違う世界で「分離」して生きることになる。


問題は貧困層に落ちた人は、もはやその子供もまた貧困層になってしまうことだ。個人の努力云々の話ではない。子供たちはスタート時点から極端な差を付けられて貧困から抜け出せない。

彼らの多くは、自分たちが貧困に生きるしかない現実を突きつけられている。当然、無理して結婚して子供を作っても、子供が貧困で暮らすことになることくらいは容易に想像がつく。

だから、結婚して子供を作るということすらも逡巡する社会と化している。日本は超少子高齢化となっており、減り続ける子供と増え続ける高齢者のアンバランスが社会のゆがみとして現れるようになっている。

これから日本は、過酷な増税、削られる医療費、延長される年金受給年齢などがすべて同時並行で起きて、国民が痩せ細っていく。


周辺国との軋轢、憎悪の連鎖、グローバル化の加速、格差の定着、若者の貧困化、超少子高齢化……。すべては、弱肉強食の資本主義が生み出したものであり根は一緒なのだ。
らkfjt
2021年01月12日 20:20
地球環境にとってみればコロナは優しいウイルスですよ☆

中国共産党もわけわからん。
独占禁止法で一企業を調査するのは結構だが、一党独裁の中国共産党…一番独占してるのは共産党だろうがw

中国の政治体制下で暮らすぐらいなら、コロナで淘汰された社会で暮らす方がマシですわ。政治体制でいうならば台湾が理想的。
報道ベースで見聞きする限り台湾のコロナ対策は頭一つ抜けている。
2021年01月12日 23:16
国民は
無能な政治家の
被害者